給水塔のある街

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小山裕之著「団地の給水塔大図鑑」を購入した。

この本には、様々な給水塔が写真・住所付きで紹介されているのだが、ある給水塔が自分の住む町内にあることが判明した。散歩は割と好きなので、よく近くの団地を眺めては、うっとりしているのだが、給水塔が建っていたなんて。

KYUSUITO下暗しである。

早速この目で実物を見に行くべく、散歩を敢行。

家を出た瞬間から「いつ見えるのか」と胸を弾ませ、キョロキョロしてしまう。普段よりもほんの少し目線を上げるだけで、街が全く違って見える。給水塔を探しているだけなのに、知らない土地を散歩しているような新鮮さがある。現代の地図に江戸時代の地図を被せて、「ここが昔は用水路だったんですね〜」ってよくある感じのあれ。1人ブラタモリ。「給水塔」という違ったレイヤーを通して街を観察すると、違ったことを知覚する。猫の気持ちになれば、猫の歩く路地が見えるのだろう。ビガップ、坂口恭平

給水塔を見学した後、牛乳を切らしていたことを思い出し、近くのドラッグストアへ。

入店するときに、会計を終えて出てきた隣のツタヤの店員とすれ違った。20才前後の女性であると思われるそのツタヤ店員のレジ袋には、「ごつ盛り塩焼きそば」が1つ入っているのみであった。おそらく休憩中に食べるのだろう。

そのドラッグストアは、数年前から透明のレジ袋を採用しており、中が丸見えなので、レジ袋をチラッと見て、その人となりを勝手に想像することがある。どうでもいい日常がちょっとだけ楽しくなる。THE・ライフハックポカリや冷えピタを買う主婦を見て「あら、お子さんが風邪かな」と心配したり、ゴールデンカレーを買うイカツイ男性に「うちはジャワ派」などと対抗したりする。マッチで擦った火のように浮かんでは消える刹那的な妄想。

ドラッグストアのプライベートブランド牛乳とサッポロポテトのベジタブル味が入った私の透明な袋を見て、誰かは何かを思っているのだろうか。

買い物を終え少し遠回りして帰宅。今日の散歩中のBGMはミッシェルガンエレファントの「チキンゾンビーズ」。

「ブギー」を聞きながら「この曲やっぱり散歩に合うわ〜」と思った。

10年住んでおきながら、この街が「給水塔のある街」だとは思わなかった。

そんな街をこの春には引っ越すことになる。今いる会社を辞めて、春には無職となり新しい街へ行くのだ。